FAIR TRADE



ETHICAL FASHION JAPANが「FAIR TRADE」とくくるものは労働者の人権に関わるものを差しており、主には以下の3つを指しています。

①FAIR TRADE
・厳格な基準をクリアし、FAIR TRADEの認証を受けているもの

②SUSTAINABLE TRADE
・認証を受けていないが、独自の工房などを運営しているなどで公正な取引・労働者への保証を行っているもの
・そのほか労働に関わる基準を順守し、労働者の権利を守っている取り組み

③SUSTAINABLE LABOR
・スタッフの働きやすさを重視して柔軟な労働条件を整え、労働者のQOL向上を目指す取り組み(Work-Life Balance)

ここでは、なぜアパレルにおいて公正な取引や労働者への保証がなぜ推奨されるべきか? をご紹介します。

WHY FAIR TRADE?

貿易と労働の歴史

グローバル化する経済のしくみが、経済的に脆弱である途上国との上下関係を築いてきました。その歴史は、イギリスの産業革命に始まり、アメリカの奴隷貿易にまでさかのぼります。綿花栽培は典型的な労働集約型産業であり、安価な労働力が不可欠でした。アフリカから移入した奴隷がアメリカで熱帯農産物を大規模生産し、できた農産物をイギリスへ運んで世界に売るという「三角貿易」体制ができました。産業革命を期に、綿花にまつわる不公平な貿易が起こり、途上国と先進国の階層構造ができあがります。そしてよりいっそうの農地拡大と安い労働力を求めて、植民地支配が加速します。

【多国籍企業の海外直接投資】
企業の本質的な目的は、少ないコストで多大な利益を得ることだ。その目的を達成する手段の1つとして、多国籍企業は海外で事業を行うために子会社を立ち上げたり、工場を建設するために、海外直接投資を行う。企業は、海外直接投資をする事によって企業内国際分業を促進させ、コストを削減することができる。しかし、多国籍企業の進出先が発展途上国の場合、環境破壊や人権侵害などが起こりやすい。

引用:http://www.aseed.org/trade/company.htm

搾取労働

そして実際起こっているのが、労働者が危険で搾取的な工場労働に従事し、無権利状態に置かれている問題です。特に近年の「ファスト・ファッション」を求める動きにより、この問題はより複雑・深刻になっています。「スウェット・ショップ」という言葉も生まれました。

過去に報道された事例として次のようなものがありますが、Zaraはブラジルの搾取工場で労働者が苦しんでいることが判明し、その生産システムへの監視を強化しました。Primark、Marks & Spencer、Ralph Laurenといった名だたる小売企業もアジアの工場で発生していたショッキングな労働慣行を認めたとされています。

こうした問題が発覚する中、人道的な生産体制を求める気運が高まり、下請け企業に労働者の待遇を改善し、決められた労働条件を守るよう指示する企業も出始めました。

バングラデシュ、ビル倒壊の教訓――下田屋毅の欧州CSR最前線(31)
パキスタン工場火災、死者310人に
米GAP、インドの下請け業者で児童労働か/MODE PRESS
「ZARA」がブラジルで強制労働か、ブラックリスト入りの可能性も/MODE PRESS
Victoria’s Secret Revealed in Child Picking Burkina Faso Cotton/Bloomberg

労働者の搾取、植民地支配、途上国との格差。このような歴史の負の産物を是正し、本来あるべき対等な取引をしていくための動きが「フェアトレード」です。

【参考リンク】
・国際労働機関(ILO):http://www.ilo.org/global/lang--en/index.htm児童労働ファクトシートI(ILO)児童労働ファクトシートⅡ(ILO)http://kokkororen.com/history.php
・International Labor Rights Forum http://www.laborrights.org/

【参考映画】
ジーンズの生産過程にスポットを当て中国の工場の現状を描く「女工哀歌」(原題:China Blue)ミカ・X・ペレド
2005年/アメリカ/88分

フェアトレードの成り立ち

フェアトレードは、第二次世界大戦の直後、アメリカのNGOがプエルトリコの貧しい人々の生計の一助にと刺繍製品を買い入れて販売したのが始まりと言われ、ヨーロッパでも同様の活動がスタートした。当初は教会をベースとしたチャリティ活動だったフェアトレードも、生産者の自立を中長期的に支援する開発協力活動へと衣替えしていった。

その後、フェアトレード専門店が欧米に生まれ、南北を繋ぐ仕組みが整っていったものの、1980年代に入って頭打ち状態に陥った。NGO的なやり方では倫理的消費者の枠を超えた広がりを実現できなかったのである。そこで一般市場に打って出ることが構想され、80年代末にフェアトレード・ラベルが誕生した。それは、フェアな基準を満たした産品であることをラベルで表示し、通常の流通販売ルートに乗せることで市場を広げようとする、一般の企業・消費者向けのフェアトレードの仕組みである。

こうして、当初からのNGO的な「連帯型」フェアトレードと、ラベルを使った主として企業による「認証型」フェアトレードという二つの相互補完的な形態が並立することとなった。

ラベルの登場によってフェアトレードは急速に普及していったが、それが社会現象化したのにはより大きな時代背景があった。社会主義が没落・崩壊したことで、新自由主義に根ざしたグローバリゼーションが90年代以降世界を席巻し、「底辺への競争」や格差の拡大を世界規模で生んだ。人や環境よりも自由競争と利潤を優先するグローバリゼーションに異議を唱える対抗概念・運動としてフェアトレードは広く支持を集めるようになったのである。

引用:渡辺龍也「フェアトレードと倫理的消費」

フェアトレードの根幹には次の3つがあります。
最低賃金の保証:国際市場価格がどんなに下落しても、輸入業者は「フェアトレード最低価格」を生産者組合に保証する。
長期的な契約:次々と安く、発注側にとって「条件が良い」工場をとっかえひっかえするのではなく、互いに高めあい、理解する関係を構築する。
労働環境の整備:小規模農家がまとまり協働で生産者組合を作り、メンバー全員で生産能力を高める取組みをしたり、市場と直接つながり交渉力を身につけ組織を発展させていったりすることで、地域社会を発展させていくことにつながる。

そのことによって、以下のような効果をもたらします。
適正な価格:労働者にとって、最低賃金が守られる。
適切な労働環境:労働時間等の基準が整備され、労働者の人権が守られ、働くにあたっての基本的な保障(健康保険など)が受けられるようになる。
持続可能な経済成長:有害な化学物質の使用が禁止されることで、健康へのリスクが大きく低下し、長く働くことができる。

【参考リンク】「商品価格のうち、生産者の手にいくらが渡るのですか?」PEOPLE TREE詳しいフェアトレードの基準について(Fair Trade Label Japan)Fair Trade Minimum Prices and Premiums(World Fair Trade Organization)

フェアトレードの認証

消費者に代わってきちんとフェアトレードが行われているか監視・認定を行っているのが、以下のようなフェアトレード機関です。無事に基準をクリアした団体・製品には、マークが付与されひと目でそれと分かるようにもなってきました。しかし、ラベルがついていなくともフェアトレードって書かれていることもあります。「フェアトレード」といっても、いくつか種類があり、日本に多いフェアトレードは大きく3つに分類できます。

World Fair Trade Organization(WFTO)
WFTOは、開発途上国の立場の弱い人びとの自立と生活環境の改善を目指す世界中のフェアトレード組織が1989年に結成した国際的なネットワーク。情報を共有しながら公正な貿易の普及を目指している。
wftoWFTOが付与する「FTOマーク」は、生産者の労働条件、賃金、児童労働、環境などに関して基準を満たしていることを認められた団体が取得するマーク。団体はマーク取得後も、自己評価と相互評価、外部検証を通じて確認しなければならない。

Fairtrade Labelling Organizations International(FLO)
floFLOのマークは、製品に対するフェアトレード認証。その原料が生産されてから、輸出入、加工、製造工程を経て「フェアトレード認証製品」として完成品となるまでの全過程で、国際フェアトレードラベル機構(FLO)が定めた国際的な基準が守られている事を証明するラベル。
参考:http://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/000014.html

③そのほか(SUSTAINABLE TRADE)
各組織の独自基準を設けているケース。生産地と直接取引をしたり、生産者コミュニティを直接支援したりしている。中には、FLOやWFTOよりも厳しい基準を設定している企業や団体もある。

FAIR TRADEとFAIRTRADEの違い
FAIRTRADE(1語)……Fairtrade Internationalによる認証・ラベリングシステムのことを指す。
FAIR TRADE(2語)……公正な取引を目指す取り組み全体を指す。

参考:http://www.fairtrade.net/faqs.html

フェアトレードへの批判

フランス人のジャーナリスト、ジャン=ピエール・ポリス氏は、フェアトレードの認定機関が交付する認定ラベルの付いたフェアトレード商品を、既存の流通に載せて販売するヨーロッパ型のフェアトレードに対して以下のような点から批判をしています。

・大げさな宣伝に反して、フェアトレード商品の流通量がとても少ないこと
・末端の生産者への経済的恩恵が少ないこと
・フェアトレードは、最も貧しい惨めな人たちを支援しているという誤解を与えていること
・“もう一つの世界”を宣伝するフェアトレード団体が、商品の販売を既存の流通経路に頼っていること
・フェアトレードの認定にお金がかかりすぎること

参考書籍:「フェアトレードのおかしな真実――僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た [単行本]」コナー・ウッドマン (著), 松本 裕 (翻訳)

SUSTAINABLE LABOR〜人権を尊重した労働を保証する基準

フェアトレード認証以外にも、労働者の人権を守ることを企業に求めるガイドライン/行動規範はさまざまあります。主なものは、次の3つです。

ETHICAL TRADING INITIATIVE(エシカル・トレーディング・イニシアティブ; ETI)
1998年にイギリスで発足した、NGO・企業・労働組合の三者などで作られるNGO団体。International Labour Organization(国際労働機関; ILO)に定められた労働権に関連した基本的国際原則を指針として導入し(ETI Base Code; ETI基本規範)、世界中のサプライチェーンに置かれている労働者たちの労働条件と生活を改善するために日々協力している。 ETI Base Codeは、労働権の行使において、国際基準を反映した9つの規範で、ETI企業メンバーはこの Base Codeを採択しなければならない。また、その企業に関わるすべてのサプライチェーンにおいてBase Codeが遵守されるよう働きかけなければならない。
参考:http://www.ftrc-jp.org/report/ETI.pdf

②ILO SA8000
1997年10月にアメリカの経済優先順位研究所が中心となってつくった労働規格。
日本語版:http://www.pwc.com/jp/ja/japan-service/sustainability/knowledge/topics/2009/20090203-00031.jhtml

GSCP(Global Social Compliance Program)

【参考リンク】
以上3つの基準の比較を見ることができます。
"Comparison of Codes: ETI Base Code; SA8000; GSCP" SEDEX GLOBAL
http://www.sedexglobal.com/wp-content/uploads/2012/05/Comparison-of-Codes.pdf

ワークライフバランスを求めて

労働者の権利という概念が生まれたのは近代のことです。労働組合が誕生したのは、産業革命下の18世紀末のイギリスといわれています。工場制機械工業が発達し、大勢の労働者が一カ所で働いて多くの商品を生み出しました。しかし、それらの生産物と富は労働者を豊かにすることなく、労働者は低賃金、無権利で、長時間労働により酷使され、ケガや病気、貧困に苦しんでいました。このような中、労働者の連帯と団結が生まれ、首切りや賃下げ、長時間労働などの無権利状態を解決するために継続的に戦ってきたのでした。そして現代になり、労働者の権利という概念は途上国の労働者に及ぶと同時に、先進国でも行き過ぎた労働を見直す動きが出てきたのです。