FASHION REVOLUTION DAY 2019

レポート:Session2「トレンドメーカーとしてできること」


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4/24(水)、渋谷のTRUNK (HOTEL) にて「Fashion Revolution Day 2019」が開催されました。

昼の部では、環境省と豊島(株)、VOGUE JAPANとケリング・グループ、H&Mとストライブインターナショナル(株)、特定非営利法人ゼロ・ウェイストアカデミーとパタゴニア日本支社によるトークセッションの4部構成。

夜の部では若者に人気のウェブマガジン・NEUT Magazineによるトークセッションと、ファッション業界の裏側に迫ったドキュメンタリー映画「ザ・トゥルーコスト」を上映。平日にも関わらず、350名以上が参加する大盛況のイベントとなりました。

 

INDEX:

Session1「ファッションと環境のつながり」
環境省大臣官房環境計画課企画調査室長 岡野隆宏氏 × 豊島株式会社 執行役員 営業企画室 室長 溝口量久氏

Session2「トレンドメーカーとしてできること」
『VOGUE JAPAN』編集長 渡辺三津子氏 
Kering Group Operations and Technology Material Innovation Laboratory (MIL) ディレクター Cecilia TAKAYAMA氏

Session3「なぜ今サステナビリティを推進するのか?」
H&M ヘネス・アンド・ マウリッツ・ジャパン(株) CSR サステナビリティ コーディネーター 山浦誉史氏 
(株) ストライプインターナショナル SDGs 推進室長 二宮朋子氏

Session4「今日からできるサステナビリティへの一歩」
特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミー 理事長 坂野晶氏 
パタゴニア日本支社 ブランド・レスポンシビリティ・マネージャー 篠健司氏


Session2「トレンドメーカーとしてできること」


『VOGUE JAPAN』編集長 渡辺三津子氏

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Kering Group Operations and Technology Material Innovation Laboratory (MIL) ディレクター Cecilia TAKAYAMA氏

「美しさ」と、サステナビリティ

S2全体

写真:森田彩花

斎藤:大きなテーマになりますが、まず「サステナビリティ」についてどう捉えているのでしょうか?


渡辺:『VOGUE』は1892年にアメリカで創刊され、現在24の国と地域で発行されており、『VOGUE JAPAN』としては今年創刊20周年になります。

実際に『VOGUE JAPAN』では、2019年2月号で「サステナビリティ」の特集を組みました*1。この数年、ファッション界の変化を身近に感じていて、このタイミングで読者のみなさんと一緒に「サステナビリティ」を考えたい、と思ったことが特集のきっかけです。どのような問題があるのか、そして、ブランドやデザイナーがどのようにサステナビリティに向けて取り組んでいるか、を伝えたいと思いました。消費者の意識も変えていかないと、全体が変わっていきません。発信者である私たち自身も、ファッション界を取り巻く問題やその取り組みについてもっと知っていきたい、という想いで特集に臨みました。


タカヤマ:私たちはグッチやサンローラン、バレンシアガといったラグジュアリーブランドを擁する、グローバル・ラグジュアリー・グループです。ケリングでは「サステナビリティ」を戦略の中核と捉えています。近年、ファッション界でもSDGsの流れやサステナビリティの動きがあるだけでなく、1990年代よりも原料は2倍に高騰し今後さらに原料調達が困難になること、「英国現代奴隷法*2」などの規制の強化や欧州委員会のサーキュラーエコノミー・パッケージ*3 といった行政機関からのサポート、消費者からのサステナビリティへの期待といった、様々な働きかけがあります。

実際に、私たちは「マテリアル」自体に目を向けています。サプライヤーに提案する際に、ただデザインだけを提案するのではなく、素材・マテリアルを重視していますね。

例えば、EP&L(環境損益計算書)*4。これは、環境に与えるインパクトを数値化したものです。丸の大きさで、環境への負荷がどれくらいあるのかが一目でわかるようになっています。この表で、一番どこに負荷がかかっているのがわかるので、これを使ってサプライヤーに提案できますし、消費者に対しても環境へのインパクトがどれほどあるのか、見てわかるような取り組みを続けています。

 

斎藤:具体的な取り組みに対するチーム、グループ内の意識はいかがですか?

渡辺:「サステナビリティ」は意識せざるを得ないですね。最近の様々な報告から、ファッション産業がいかに環境に対して大きな負担をかけているか、を伺うことが多いです。いち個人としても、そのことに対してショックを受けています。楽しいはずのファッションが環境に負担をかけている、という矛盾に、モヤモヤしています。

だからこそ、読者のみなさんとこの意識を共有したい。メディアとしての責任でもあります。世界的なメディアの『VOGUE』だからこそできる問題のグローバルでの共有が一歩進んだ形になっていると思っています。

タカヤマ:私たちも、サステナビリティに対して「当たり前」に取り組んでいます。強いガバナンスのもとで、グループ全体にわたって「サステナビリティ」という考えが根付いていいますし、各ブランドが高い水準で取り組んでいます。

斎藤:渡辺さんの話の中で「グローバルでの共有」とありますが、実際にどのようなことを共有されていますか?

VOGUE

写真:森田彩花

渡辺:国を超えて、それぞれが発信するコンテンツは共有し、『VOGUE』全体でインスパイアし合っています。例えば、最新ではドイツのVOGUEが丸ごと一冊サステナビリティ特集を組んでいて、ファッションアイコンかつサステナビリティのシンボルであるモデルをタイトルに起用しています。オフィスの環境自体も、プラスチックのカップを使わない、紙の使用を制限するといったものから、自転車で取材に行くなど、取り組んでいるようです。


『VOGUE JAPAN』でも、色々な形で継続的に発信していきたいと思っていて、その一つとして、VOGUE FASHION'S NIGHT OUT(FNO)*5 を開催しています。今年は開催から11回目のサブテーマとして、「ファッションとサステナビリティ」を計画しています。「サステナビリティ」をテーマとしたのは、時代の動きとともにファッションができる「社会貢献」について考えるきっかけにしたい、と思ったからです。チャリティTシャツの販売を行い環境保全団体に寄付をしたり、不要となった服を回収し再生素材としてリユースする取り組みも行う予定です。


斎藤:積極的に国を超えてコンテンツを共有し、『VOGUE』全体で「サステナビリティ」に取り組まれているのですね。ケリング・グループでは、どのようなコミュニケーションをされていますか?

タカヤマ:私たちのユニークなポイントは、ブランドの中枢の者がデザイナーとプロダクションと同時に、オペレーションのレベルでも関わっていることです。サプライヤーとの距離も近く、リソース側として教育の機会もあります。私たち側からだけでなく、サプライヤーがもっとサステナビリティを求める声もあります。


斎藤:オペレーションにまで落ちていることがすごいですね。また、先ほど説明にあったEP&Lという「基準やツール」を作っていることも、素晴らしいですが、その目的や意図は何ですか?

 

Kering

写真:森田彩花


タカヤマ:サステナビリティはビジネスの一部。このような基準があることで、何をビジネスに盛り込むべきか捉えることができ、共通のビジネスツールとして使えます。具体的に「環境コスト」として用いることで提案もできますし、オープンソース化も促進できます。

斎藤:みんなでできる仕組みに「するのは大切ですね。では、両者に質問ですが、サステナビリティに取り組む中で、チャレンジングなことや障壁はありますか?

渡辺:障壁というよりも、サステナビリティの特集を組んだ時に、ポジティブな反応をたくさんいただき、実際に読者のアンケート調査でも人気ベスト3に入る特集になりました。それは、読者・ファッションに関わる人たちの関心が高まっているという証拠。「サステナビリティ」についてもっと知りたい、という20〜30代の声も多いです。

ファッションは楽しいものであって、読者が「美しい」と感じると同時に、前向きになれることが大切です。チャレンジングなことは、ファッションの「喜び」とともに、サステナビリティを伝えて行く、ということですね。

タカヤマ:マネジメント、マインドセットを変えることがチャレンジですね。サステナビリティは「トレンド」ではなく、実際にビジネスに入れ込んでいくことが必須です。「美しい」かつサステナビリティなものを作ることに、チャレンジしていきたいと思っています。

斎藤:社会全体が、世界のグローバルゴール(SDGs)に向けて取り組んでいる中で、改めて大切にされていることは何ですか?

渡辺:2月号の特集の中で、「ファッションはエモーショナルなもので、影響力を持っている産業。そのファッションが積極的なリーダーとして、サステナビリティに対して取り組むのは大切」という、あるデザイナーの方の言葉が印象に残っています。

 

ファッションだからこそ、できることはあります。ケリングさんのように、スピード感を持って進めていくことは、私たちメディアにとっても、ありがたいです。ラグジュアリーの中に、サステナビリティは必然として入ってきていますし、「サステナブルだからかっこいい!」という流れに必ずなる、と思っています。

タカヤマ:戦略を作る側として、机上の空論でなく、実際に行動に起こすことが大切です。

ケリングでは、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(LCF)と協働してファッション、サステナビリティに特化した公開オンラインコース(MOOC)*6 を開設しました。次の世代への教育にも力を入れています。

斎藤:ラグジュエリーを、牽引されてきた両者から直接サステナビリティへの取り組みに対するいしを直接聞けたことはとても貴重でした、「義務」ではなく、「自然にアタリマエに」に取り組んでいくこと、また「オープンに、みんなで進めていく」具体的なアクションが大切だと感じました。

 

(文:小澤茉莉)

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*1:エルメスやグッチなど世界的ブランドを筆頭に、さまざまなブランドやグループが取り組むサステイナブル改革や、ヴィンテージ市場の新たな動きまでを徹底取材。リチャード・クインやマシュー・ウィリアムスなど、モード界が注目する若手デザイナーのインタビューも交え、ファッション界のエココンシャスな未来について考える特集に。https://www.vogue.co.jp/magazine/2019-02
 
*2:2015年3月に英国で制定された、現代の奴隷制を防止する法律である「Modern Slavery Act 2015 (現代奴隷法)」。この法案は企業に、サプライチェーン上の奴隷制を特定し、根絶するための手順の報告を求めている。
(参考)Sustainable Japan:https://sustainablejapan.jp/2016/07/13/modern-slavery-act/22928
 
*3:2015年12月に欧州委員会で採択された、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)の実現に向けたEU共通の枠組み構築を目的とする新提案。ヨーロッパ経済を循環型経済システムへと移行することで、国際競争力の向上、持続可能な経済成長、新規雇用創出などを目指す。
(参考)Sustainable Japan:https://sustainablejapan.jp/2015/12/26/eu-circular/20418 
*4:ケリング・グループのビジネスにおける環境インパクトを分析したもの。
(KERING:https://www.kering.com/en/news/kering-publishes-2017-group-ep-l-results
 
*5:「VOGUE FASHION'S NIGHT OUT(FNO)」は、アメリカ版『VOGUE』の編集長アナ・ウィンターの呼びかけで、2009年にスタートした世界最大級のショッピング・イベント。(VOGUE JAPAN *2018年の様子:https://www.vogue.co.jp/fno/
 
*6:ビデオやポッドキャスト、演習やディスカッションを織り交ぜたオンラインコース。専門家だけでなく学生やサステナビリティに関心がある人を対象とし、2018年には世界44カ国、17,000人以上が本コースを受講した。
(Future Learn:https://www.futurelearn.com/courses/fashion-and-sustainability