Texitale Excahnge JAPAN DAY

~今、求められるサステナブルテキスタイル~ パネルディスカッション(前半)


今回のレポートでは、6月に行われた、Texitale Excahnge JAPAN DAYでの議論からディスカッションテーマを前半と後半に分けお伝えしていきます。ソーシャルな取組みやエシカルな商品開発に日本の企業が繊維分野からどのように参加することができるのかを多様な立場から意見交換したこのイベント。第2部のパネルディスカッションでは、各パネラーの方々から主にオーガニックコットンに関してどのように取り組んでいるのかNGOや小売店、研究者の立場から先進的な事例をお伺いしました。まずは、前半のディスカッションの様子をレポートしていきます!

(第1部の講演内容に関しては、こちらの記事を参照下さい。)

 

パネルディスカッション①「オーガニックコットンに国際認証が果たす役割とは?」

モデレーター:

山口真奈美((株)CUJ コントロール・ユニオン・ジャパン 代表取締役)

パネラー:

三好智子氏(GOTS オーガニックテキスタイル世界基準 地域代表)

松井譲治氏((特活)フェアトレード・ラベル・ジャパン マーケティングマネージャー)

成田由香子氏(認定NPO法人ACE 事務局次長、子ども支援事業チーフ)

Anne Gillespie氏(Textile Exchange 認証基準部長)

日本の繊維業界が抱える課題と各認証制度の広まりをどう考える?

エシカル素材代表のオーガニックコットン。GOTS(GOTS オーガニックテキスタイル世界基準)の報告によると、欧米・北欧・ヨーロッパなどを中心に取り組みが広がっているのに対し、日本の企業は、関心と意識は高まっているものの、知識が追い付いていない状況であり企業の抱える課題です。一方、日本の消費者はというと、児童労働問題やオーガニックというものに関心を強く寄せているものの、実施に製品を選ぶ際、どのようなラベルを判断材料にするのか、私生活にどう取り入れるのかは情報不足であり、選びたくても選べない状況にあります。このように、企業と消費者、両側が異なる課題を抱えているのです。

また、フェアトレード認証に関しては、FLJ((特活)フェアトレード・ラベル・ジャパン)からこの1~2年の間に関心を持つ企業は増加傾向にあると報告されました。実際に取り組むには時間がかかるとはいえ、まずは中身を聞いてみようという動きが活発であるとのこと。また、昨年のこの場でも、3社からフェアトレード認証製品導入に関する声がけがあったそうで、導入プロセスを知ってから参加するまでの速度はかなり早くなってきていることが分かりました。企業側が問題を知って、行動に移す。その移し方が分かった時、活動が一気に加速しているようです。

しかし、未だ日本では発展途上といえる認証の取組。さらなる広がりのためにはどのようなきっかけがあるのでしょうか。

 

海外事例から企業が認証に取り組む際のきっかけを探る

Textile Exchange 認証基準部長のAnne氏によると、企業が認証に参加する動機はいくつかあります。第一に動物愛護団体のように積極的な変革活動を行う団体や組織の存在がきっかけになり得ます。第二に、同業他社が認証に取り組み始めて成功した場合、自社も遅れてはならないというモチベーションに繋がります。加えて、企業内における教育の重要性も指摘されました。企業活動が自然環境や社会に及ぼす影響とその解決策について学んでいくと、自身に何ができるのか選択するようになり、リスクアセスメントの結果、認証の取組に参加する企業も出てきています。これは、持続的なビジネスをするうえで天然資源へのアクセスが限られることを知り、行動に移した例であると言えます。Anne氏の発言の中で特に強調されていたことは、「一人の人の行動が起爆剤になり得る」ということでした。個人がイベントで話を聞いたり、読んで得た知識をもとにアイディアを練り、企業に持ち帰った結果、イニシアティブをとり大きな動きにつながっていく。その可能性に期待が持てる力強い言葉でした。

science-1182713_1280

Some rights reserved by markmags

 

オーガニック志向や自然環境への意識だけでは不十分。人権問題への関心にどうこたえる?

ここまでのディスカッションから、様々な取組の切り口があると分かります。しかし、現在日本ではオーガニックや環境影響への意識に加え、人権問題への関心がよく話題に上がるようになりました。では、認証制度はこの流れにいかに対応しているのでしょうか?FLJの企業分析によると、実際にフェアトレード認証に参加する企業は、外部環境の変化に影響を受け動き始めています。2013年にはバングラデシュの縫製工場ビルで大変悲惨な崩落事故が起きました。これに端を発して、低賃金、長時間労働のうえに企業が利益を上げているという現状を様々なメディアが可視化しようと挑んでいます。また、途上国のサプライヤーとのビジネスが拡大するうえで、人権侵害や環境破壊、不法投機といった問題が知らないところで起きている。そういった事実も徐々に発信されるようになりました。これを受け、商品企画の担当者や企業マネジメントに携わる人々はリスクヘッジ(*起こりうるリスクを回避したり、軽減するような工夫)の一環としてグローバルな物の流れに目を向けた結果、解決策の手段の一つとしてフェアトレードを選ぶという動きにつながっています。

8734344534_73e7e3ae7a_z

Some rights reserved by ILO in Asia and the Pacific

企業のリスク解決のための認証活用やアクション。NGOはどのように協働できるのか。

このテーマに関しては、「困難を抱える現場」の声を届けることのできる立場として、ACEから紹介がなされました。彼らは、現場で起きていることを教材などに落とし込み、まずは知ってもらうこと。「児童労働の現実と私たちの消費やビジネスとのつながりをできるだけ分かりやすく伝え、自分ごととして捉えてもらう。そのために、自分たちは存在すると語っていました。そして、あえて現地に外部者が入ることで子どもの人権をはじめとした問題に気づいてもらい、現地の人々自身の力で解決していくその一助になりたい。」とのことでした。日本国内の企業とは、情報共有からはじまり、フェアトレード認証チョコレートの開発や、オーガニックコットン製品の企画など行動の起爆剤となっていることが分かりました。

 

印象的だったのは、認証システムや基準が果たす役割は、「アンフェアな世界からフェアな世界へボトムアップを図るツール」であるということ。そして、パネラーの方が口をそろえて、「認証が必要でなくなる世界を実現したい」と語っていたことでした。児童労働の存在や遺伝子組み換えをはじめとするコットン製品が抱える課題、そして日本でも見られる長時間労働・低賃金の現状。これらすべての問題は私たち自身につながっています。その負の構造にまずは気付き、そして目覚め、新しいシステムを構築しようと行動を起こしていくことが次の段階につながっていく。このように重要なメッセージが発信されました。

<文:丹波小桃>

各団体活動概要

GOTS オーガニックテキスタイル
オーガニック・テキスタイルの世界基準。GOTSのラベルには、「Organic」=製品の95%以上が認証されたオーガニック繊維、「Made with Organic」=製品の70%以上が認証されたオーガニック繊維を使用したものの2種類がある。世界60カ国以上で3,085件の認証工場、企業が存在する。
特定非営利活動法人 フェアトレード・ラベル・ジャパン(FLJ)
ドイツに本部を持つ、Fairtrade International の構成メンバーとして日本国内における国際フェアトレード認証ラベルのライセンス事業、製品認証事業、フェアトレードの教育啓発活動を行う。2013年時点で、世界74カ国の生産者組織が認証を取得。加盟する生産者・労働者数は140万人を超える。
認定NPO法人ACE
世界中のすべての子どもが権利を守られ、希望を持って安心して暮らせる社会を実現するため、市民と共に行動し、児童労働の撤廃と予防に取り組む国際協力NGO。具体的にはインドのコットン生産地とガーナのカカオ生産地の児童労働問題に取り組んでいる。現在は「ピース・インドプロジェクト」を現地NGOと共同で実施。興和(株)とコラボレショーンし、フェアトレード、オーガニックコットンの製品開発も行っている。