English: EDAYA×EFJ Dialogue~Intangible Culture and Ethical Fashion~

EDAYA×EFJ対談~無形文化とエシカルファッション~


無形文化遺産を残し伝える活動を行うアートユニット・EDAYA。7月17日に渋谷・UPLINKでのイベントを控え、EFJ代表・いおがEDAYA山下彩香さんを迎えて対談を行いました! 無形文化とエシカルファッション。そもそもそれぞれが分かりにくいテーマではありますが、いったいどんな関連があるのでしょうか? 4回にわたってお届けしました。
(※2012年8月11日付で、ユニットEDAYAは新たにduo edayaと改名し、展開するブランド名をEDAYA ARTSからEDAYAとして活動しています。本記事は2012年6月・7月にかけて発表しました。)

第1回 無形文化ってなんだろう?
第2回 無形文化とエシカルの共通点
第3回 エシカルなお買い物とは
最終回 EDAYAと無形文化

対談第1回:無形文化ってなんだろう?

文化の3つの種類

竹村伊央(以下、いお): こんにちは。今日はよろしくお願いします。

山下彩香さん(以下、敬称略・山下): こちらこそよろしくお願いします!

いお: まずは、山下さんが考える『無形文化』とは何か、説明していただけますか?

山下: 無形文化とは文字通り「形を持たない」文化のことです。音楽は当然含まれますし、地域に古くから伝わっているお祭りなんかも含まれるんですよ。「無形文化遺産」というのはUNESCOの付けた名称ですが、日本だと「無形文化財」「民俗文化財」と呼ぶこともありますし、「人間国宝」といったしくみもあります。

いお: なるほど、いわゆる「伝統文化」ということですか?

山下: いえ、無形文化は「伝統文化」には限りません。「アキバ」も無形文化の1つと言えるものになりつつありますよね。「伝統文化」とは人々がそれぞれの地域で長い間大切にしてきた考え方やライフスタイルを広く指すものだと思います。EDAYAでは、伝統の無形文化を、今生まれつつある無形文化とのバランスの中でどうやって次世代に伝えていくかを考えていきたいと思っています。

EDAYAはエドガー・バナサンさん(左)と山下さんの2人のユニット。

いお: 「今生まれつつある無形文化とのバランス」というと?

山下: 私が思うに、文化には3つのパターンがあって、①古来より、人間がその必要性に迫られ工夫を凝らして誕生したもの(伝統とか、無形文化遺産など)、②昔から続いているものにアレンジが加わり、再発見されているもの、③現代になってから誕生した文化、という3つです。専門家の方々には怒られそうなざっくりとした定義なのですが、私はそう考えています。

EDAYAは、①と②の2つのバランスを考えたいと思っています。伝統そのものと、今の時代に合うように伝統をアレンジしたものです。歌舞伎に対してスーパー歌舞伎というのがあります。スーパー歌舞伎として従来の歌舞伎ではありえなかった空中飛行などを取り入れたりしながらも、昔ながらの歌舞伎の魅力を伝えています。新しく変化を遂げながらも、古来のライフスタイルの知恵や精神を現代に残し伝えるにはどうしたらいいのか? と追求して活動しています。

EDAYAが取り組むフィリピンの伝統音楽を未来に伝え残すプロジェクトでは、楽器をモチーフにしたアクセサリーを製作し、関心を寄せる間口を広げている。

いお: ある文化が普遍的に同じ形式で残っているわけじゃない。その文化がどのようにして生まれたかを理解したうえで、時代に合わせてどんな変化を遂げてきたかをたどると興味深いですよね。

山下: そうですね。文化は、その土地で自然に受け継がれていく間に必要に応じてアレンジされます。でも、それに魅力を感じた誰かが「もっといろんな人に見てもらいたい」と思ってアレンジを施すと、劇的な変化を遂げることがあります。それが②の「再発見されているもの」。例えば、岩手の南部鉄器とかも、元々はただの黒い鉄器です。しかし現在、フランスで人気を集めているのは、アンシャンテというブランドの南部鉄器のティーポットで、ショッキングピンクなどの色を塗っていて、これまでにない新しいデザインなのです。そういう試みも邪道だと思いません。「正統血筋」の伝統技術と、いわば、突然変異的なニュータイプ、どっちも必要だと思っています。

多様な文化の根底はみな同じ?

いお: 文化とは本当に多様なものですよね。

山下: でもよくよく考えると、人間というほ乳類が誕生した時代までさかのぼれば、単純に、衣食住が必要だったという面ではみんな同じ条件だったと思うんですよ。そこから、世界中のそれぞれの場所で、環境に適合し、その土地のものを利用し、また人々とうまく暮らしていくために、人間が想像力を働かせた結果、文化が多様になったのだと思っています。

いお: 一見全く異なる文化に見えても、根本にあった動機は衣食住と同じ、ということならば、異なる文化圏のものでもいろんな共通点があるかもしれませんね。

山下: だからこそ、文化のアイデンティティとは、その土地で継承されていることが1つの鍵ではないかと思います。ただ、継承され続けていくために、その文化を尊ぶアクションも必要。②はそういうところにもつながってくると思うんですよ。

いお: 単純にありのままを守るだけでは未来に残せないですよね。

山下: だから、私が先ほど挙げた南部鉄器の例なんかはすごい参考になると思います。いろんな色に着されたされたポット、すごいかわいいですよ~。

Via: http://www.enchan-the.com/

いお: かわいいですね~。こういうのは何も知らなくても「かわいい」って思いますよね。でもその根っこにあるものや歴史を知ると、もっと面白くなるってことですね!

山下: そうです! アレンジされたものから入って、オリジナルなものに着目する人が増えるというのは一つの無形文化を次世代までつなげていく一つの切り口だと思います。

いお: そういう面で、無形文化とエシカルファッションは通ずるところがあると感じます。次回はエシカルと絡めてお話していきましょう!

山下: どうぞよろしくお願いいたします!

→第2回 無形文化とエシカルの共通点

対談第2回:無形文化とエシカルの共通点

「エシカルなマインド」

竹村伊央(以下、いお): 今回もよろしくお願いします! 前回は「エシカル」と「無形文化」には共通点がある?! というところで話が終わってましたね。

山下彩香さん(以下、敬称略・山下): 私、この対談が決まってから、エシカルについて勉強してみたんですけど、エシカルって、それぞれの人で定義が様々なんですね。「道徳的な、倫理的な」という意味から始まり、環境と社会への配慮を広く表す言葉がエシカルなのだとか。その配慮のやり方を、それぞれの人が考えられるという意味でとても間口の広い言葉だと思います。

いお: そうなんです。だから、人によっていろんなやり方があっていいんですよね。ただ、間口が広いからこそ、分かりにくかったり広まりにくかったりするのかなとも思います。

山下: そうですね。たぶん、このエシカルという言葉の普及の先にある目標は、より良い世界や未来の実現で、一人ひとりがエシカルな態度をとれば、きっとそれが実現できるということなのかな。そうすると、無形文化から学ぶ姿勢、無形文化を次世代までつなげていこうとする姿勢も、「エシカルな態度」と言えるのかな、と思いました。

いお: 確実にそうですね!

山下: 便利な世の中を否定するのではなく、どんどん進歩する世界とのバランスの中で、一人ひとりがより良い世界・未来のために、自分の幸せを犠牲にすることなく、気持ち良いかたちで何かアクションを起こす。それが、エシカルなのかな。

いお: その「一人ひとり」というのが鍵なんですよ。社会は一人ひとりの人間が集まってできているものなので。でも、自分の目で見て考えて、自分の価値観で判断する――それは労力も時間もかかることですよね。なのに、みんな生き急ぎすぎて、早く結論を出そうとする。「みんな」が良いと言う物を鵜呑みにしておけば、手っ取り早く「正解」にたどりつけるってことになってるんじゃないかと思っています。

いお: それがファストファッションだったりするわけです。いかに手間やお金をかけずに「おしゃれ」と言われるスタイルを取り入れるか、という。

山下: たしかに。そういう意味でも、一人ひとりが自分で考えて、自分の意志でアクションを起こせるように、エシカルという言葉自体が消費の面から広がりつつあるのはいいことなのかもしれないですね。自分にとって本当に価値のある物を選ぶ、という人がどんどん増えればいいですね。

いお: 伝統工芸も人が長い期間、考えて工夫して生まれきた物。先人の知恵の結晶という文化の財産なんですよね。それが現在の経済システムのために失われてしまうのはあまりにももったいない。その観点から、伝統技術を生かした生地作りや染めもエシカルファッションの要素の1つとして含まれるんですよ。

山下: それは納得です。いろいろ考えていたんですけど、本質的には「無形文化から学ぶ姿勢」「無形文化を次世代までつなげていこうとする姿勢」そのものがエシカルな態度なのだと思います。

日常を丁寧に過ごす

山下: ただ、無形文化を守ろうとすることはいいことなんですが、文化は日常に溶けこまなくては意味がない。普通の日常とリンクするには、やっぱり何か身近なチャンスや媒体が必要なんですよね。やっぱり取り入れやすいのはファッションなのかな。

いお: 洋服は第2の自分の肌で、毎日着ますからね。自分を表現するものだから、自分が何を大切にしたいのか、そういう伝統文化を愛する気持ちを表現する一つの手段に確実になりますよね。

山下: とは「食」もそうではないかと思います。今日本は、政府主体で、日本食を無形文化遺産登録しようって動いているんですけど、ご存じですか? 料理というのは、エシカル×無形文化のキーワードを身近に感じるのに入りやすいかも。

Via:日本食文化の世界遺産化プロジェクト

いお: こういう動きもあるんですね。さっきもおっしゃってましたけど、無文化を守る/愛する気持ちそのものがエシカルなんですよね。それはつまり、そういう気持ちから生まれるものは、「エシカルな無形文化」になるのだと思います。

山下: すごい素敵です♪わたしも、そう思います!! そういう気持ちで服を含めた文化を楽しむ人がじわじわ増えたら、きっと次世代までまたつながりますね!

いお: だから、エシカルなマインドでファッションを楽しんでいると、そこからまた新しいエシカルファッションのかたちが生まれる可能性があるかもしれませんね!

→第3回 エシカルなお買い物とは

対談第3回:エシカルなお買い物とは

山下彩香さん(以下、敬称略・山下): 第2回目までは、「無形文化とエシカルファッション」の共通点を探ってきましたが、具体的に『無形文化を守る/愛する気持ちを持って、ファッションを楽しみたい!』と思った場合には、どういった選択肢があるのでしょうか?

竹村伊央(以下、いお): まず、EFJで考えるエシカルファッションのあり方を説明しますね。さまざまな取り組み方があるとは思いますが、EFJでは8つに分けて定義しています。①フェアトレード、②オーガニック、③アップサイクル、④ナチュラル、⑤クラフト、⑥ヴィンテージ、⑦サステナブル素材、⑧スロープロダクション、の8つです。団体・人によっては、クラフトとヴィンテージをいっしょにしていたり、EFJが「スロープロダクション」と定義しているものを「ハンドメイド」「ローカルメイド」としていたりします。それらさまざまな取り組みを総称して「エシカルファッション」と呼びます。根底にあるものはいっしょで「より多くの人が笑顔になる方法でファッションを楽しみましょう」ということです。ファッションの中で無形文化を生かすとなると、昔ながらの伝統技術=craftmanshipということで「クラフト」になるのではないでしょうか?

山下: エシカルファッションのカテゴリーの中に「クラフト」が入っているのは、どういった理由からですか?

いお: 伝統技術を守る/未来にも続けていくというのは、物を大切にする気持ちからくるものではないかと思います。一つの物を最後まで大切に使うというのもエシカルの形なので含まれると考えます。それに今は、新しいものが次から次へと作られる時代。でもそのために、昔の良いものが壊されたり後を継ぐ人が減ったりすることで、それまで時間をかけて作り上げてきた「伝統」がなくなってしまうのは悲しいことですよね。

Sumba Ikat Weaving - Komodo, Indonesia Via:whl.travel

山下: 伝統技術をファッションに生かすとなると、現代風にアレンジを加えることが多いのでしょうか?

いお: そればかりとは限りません。染めの技術を受け継いでいる職人さんたちは、昔のままのレシピを守っていますが、そうやって昔の技術そのままを守り伝えるということも含められます。

山下: そうすると、着物をそのまま身につけることもエシカルにはなるということですか?

いお: そうですね。でも着物でいえば、着物は元々、すごくエシカルな服ですよね。昔の生活者は、着物を代々受け継いで着用していました。着物をしたてる時には、後でサイズや丈を直せるように、余っている部分を切り落としたりしていませんし、ほつれれば直し、穴が空けば当て布をしたりとなるべく長く1枚の着物を着ていたそうですしね。

山下: でも、現代の人が着物を着るというのもなかなか大変なことですよね。エシカルファッションでは、若手のデザイナーさんがうまく伝統技術を取り入れてアレンジを加えて発表すれば、それが技術の継承になるから全てよい、という認識なのでしょうか。

いお: それで全てよい……と考えているかは分からないですが、前回おっしゃっていた2つの無形文化を守る道の1つとしては確実にありますよね。時代に合わせて伝統文化も進化すべきだと思います。例えば、araisaraはとても良い例だと思います。

araisara AW2012 Via:Changefashion.net

山下: EDAYAではその点で本当に悩んでいるところなんですよ。いくら伝統とはいえ、文化は生きたものであるべきだと思うんです。だからといって、今使ってもらえるように、とにかく新しい風ばかり取り入れていけばよいかというと、それも違う。きっと、アレンジを加えた「伝統技術」の成功例と「伝統技術」の間には、何か共通する文化の魂みたいなものがあるんだと思います。

いお: 魂。そうですね。アイデンティティーとでも言えるものでしょうか。芯にあるものが崩れてしまうと、また違うものになってしまうと思います。その芯にある物を守るために、時代の変化に寄り添う……というイメージの方が、伝統技術をきちんと継承していけそうですね。EDAYAさんのアクセサリーにしろ、どういうふうにその芯を伝えるかが鍵だと思います。

山下: 「無形」だからこそ残りにくい文化という物をどう伝えるか? と考え、楽器をモチーフにしたアクセサリーを今は作っています。それを起点に、元々の楽器が日常生活の中でどう使われ、儀式ではどういった役目を果たし、どういった考え方がベースにある文化なのかというところを伝えていきたいですね。

いお: そういう実際に無形文化が持っているストーリーや背景が分かると、共感もしやすいですし、興味もわいてくると思います。

山下: ストーリーって大事ですよね。物を買う時にそれを基準にしようという動きが消費者の間に広まってきているのはよいことだと思います。

いお: エシカル的な買い物の仕方なのかもしれませんね。

山下: 確かに。ただ、2極化されてきている気もします。 ストーリーで付加価値を付けた商品と、ファストファッションのような商品。先日訪れたヨーロッパではあまりにもファストファッションが普及していてびっくりでした。

いお: その点で、エシカルファッションとは何かについて一つ付け加えるなら、私は「透明性」だと思ったりします。

山下: 「透明性」とは、どういうことですか?

いお: 例えばEDAYAさんの商品は、バックグラウンドにどういう過程とストーリーがあるのか、消費者はすぐ知ることができます。でも、ファストファッションは裏側が全く見えない。どんな作り方で誰が作っていて、ストーリーは果たしてあるのか? そもそも「便利」という言葉がどこかで、「都合の良い」という言葉に変換されてしまっているかのように思えます。それが付加価値、ということも確かにあるかもしれませんが、ファストファッションとは、ストーリーを伝えるという商品ではないと思っています。

ファストファッションの普及は、一般の消費者の価格感覚をある意味で「破壊」しました。そこで、今までの価格設定では「高い」と感じる人たちも出てきているのではないでしょうか? 世の中には作り手の思いが詰まって、ストーリーがある商品もたくさんありますが、それらを知る機会が限られていますよね。理由があって高い値段が付けられていても、その理由を知ることができなければ、結局どのくらいが適正な価格なのかも分からず、納得しにくくなってしまうのだと思います。

そこで、消費者が背景を知ることができるという「透明性」があるのが、エシカルファッションだと思うんですよ。それに、消費者には知る権利があるわけだし、消費者がもっとデマンドして良いと思うんです。

山下: なるほど。洋服という毎日着るものから人々の意識が変わって、ひいては自分が消費しているものがいったいどういうものなのかということに関心を持って、選択していくという買い物に対する意識が生まれていけばいいですね。

いお: そうやって伝統工芸も未来につなげていけたら良いと思います。

山下: そう思います♪

最終回 EDAYAと無形文化

対談最終回:EDAYAと無形文化

竹村伊央(以下、いお): それでは、EDAYAについて、もう少し詳しくお聞きしたいのですが、なぜ、無形文化を守ろうと思ったのか、きっかけなどをまずは教えてください! 

山下彩香さん(以下、敬称略・山下): もともと「文化」には興味があったんです。文化って、人間の創造性がぎっしり詰まったもの。そして長きにわたって人々の間で伝えられてきたもの。これはなんだかすごい。ロマンがあるな、と。

そこで、大学院時代に「マイノリティと芸術」というテーマで旅をしたんですが、たまたまフィリピンの山岳地方を訪れたんです。そこで出合った文化がものすごく印象的でした。特に、無形文化といわれる物が。

いお: 具体的にどんなことが印象的だったのでしょうか?

山下: 日常のありとあらゆる行為に理由がある。たくさん儀式もありますが、一つ一つ理由がある。日本のアニミズムに近い信仰だと思いますが、例えば、木一本にも霊が宿っていると彼らは考えます。そして病気になったとしたら、もしかしたらその木に何か悪さをして霊の機嫌を損ねてしまったのではないかと考えます。その霊が何であり、何が原因で霊の機嫌を損ねたかによって、儀式も柔軟にやり方を変更します。彼らは本当に自然と共に生きる術を知っています。儀式の様子は映画でも見られるのでまた上映する際はぜひ見てみてください!

しかしかたや、携帯に合わせてレディガガの歌を歌い、facebookに興じる若者も大勢います。フィリピンは英語が通じます。山奥でも、ハリウッドの映画などがそのまま入ってきます。だから、若者が伝統的なものに古くささを感じてしまうのだとしたら、それも無理はないのかもしれません。

私は人々が便利さを求めたり、より豊かな生活を求めるのは当然のことだと思いますが、ただ、それら「いまどき」のものが広がるスピードが速すぎる気がするわけです。つまり、伝統が失われるスピードが。

いお: なるほど。そういったことでは、フィリピン以外にも同じ問題があるかとおもいますが、EDAYAはなぜフィリピンだったのでしょう? 他の国は検討されましたか?

山下: 今は、フィリピンをベースに活動していますが、基本的に世界中の無形文化に興味があり、世界を視野においた無形文化活性のためのプロジェクトも構想中です。でも、フィリピンは私にとって特別な国。人生のテーマである「芸術とマイノリティ」を確信するきっかけとなった国なので、ものすごく特別です。漠然とそのテーマを考え、それに合う旅を考えていたときに、フィリピン、コーディリエラ地方の先住民を相手に演劇を使ってエンパワーメントを行うNGOに出会い、初めて訪ねました。

いお: 現在一緒に活動を行っているEdgar さんとの出会いもそのときですか?

山下: 初めはそのNGOで竹楽器の演奏家としてボランティアをされているときに会いました。彼は、カリンガ族に伝わる竹楽器の製作者であり、演奏家です。しかしそれでは生活ができなくなってしまったため、当時は鉱山という厳しい環境で働いていました。そこで、大学院での研究のアシスタントをお願いしました。

いお: お二人はどんなきっかけでEDAYAを発足させたのでしょう?

山下: その時、エドガーさんと話したのは、伝統の継承者がそれで生きていけるようなしくみを作り、次世代にも伝統が残っていくようにしたいということ。
無形文化について、現地の人に、自分たちの文化に価値があるという意識を持ってもらい、行動する必要があります。でも、きちんとそれを仕事にできなければ、結局はエドガーさんのように、他の仕事で生活してなければならなくなるのです。だから、無形文化の大切さに気づいた若者が、それだけで生きていけるしくみを作るのは必須で、同じような考え方を持っていたエドガーさんとでは、具体的にどういうことができるだろう?という話が始まりました。

いお: なるほど、7月17日にはさきほど紹介のあった映画の上映会、21日にはDAYS JAPAN掲載もあって、フォトジャーナリストの丹羽理さんとのトークショーがありましたが、参加者の方々からは、無形文化の現状やコーディリエラ地方の話を聞いてどんな反応がありましたか?

山下: まず17日は、カリンガ楽器のミニパフォーマンスを行い、実際に楽器にさわっていただきましたが、中でも鼻笛が好評でした。日本ではなかなか見かけない楽器だからでしょうか。映画の方は、ほぼ全ロケ、カリンガで行ったことがよかったようで、風景や音楽に感動したという方が多くいらっしゃいました。21日は、ジャーナリズム的な観点から、無形文化が村から消えつつある背景として、現金収入をえる手段がない、ということを挙げ、若者が街に出稼ぎに出るものの働き口がなく、結局鉱山での労働におさまってしまうんだ、という話をしましたが、問題意識を共有できて嬉しかったです。

いお: それは嬉しいですね。文化は誰かが「生きた文化」として次世代まで伝えていかなくてはいけない。文化は、人間の生活におけるクリエイティビティの結集なので、実用的なはずですよね。だから、今の時代でも十分に役に立つものですよね。

山下: そのとおり! その今にも通じる価値を今後も伝えていきたいと思っています! なので今後のEDAYAの活動もぜひ楽しみにしていてください!

いお: ぜひ! 本当に今回はありがとうございました!

(おわり)

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